Jun 13, 2010

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 日経平均株価は8500円を下回り、東日本大震災の混乱の最中でつけた年初来安値8227円(3月15日)を窺う水準にまで下げてきた。8月上旬に10000円の大台を割って以降は、下落する一方で、株価浮上のきっかけが見えてこない。これからの日本株は、どこへ向かうのかを証券各社のストラテジストに聞いた。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部のシニア投資ストラテジストの折見世記氏は、「株価の上値を抑える構造的な問題は簡単には解決しないが、株価は循環的な要因で戻ることもある。構造問題のプレッシャーが和らぎ、循環的に株価が反発に向かうタイミングを狙って動きたい」という。

――日本の株価の当面の見通しは?

 現在の株価は、名目GDPに連動する傾向がある。右肩上がりの名目GDPが想定できないために、株価は上がってもリバウンド程度で、名目GDPと株価の回帰分析から7700円くらいまでのダウンサイドリスクが存在する。一方、戻りの想定は、年末までには9000円から9500円くらいの水準を予想する。金融危機の発生を免れ、来年以降に向けた循環的な回復局面入りを想定したベストシナリオで、年度末には9000円台半ばから1万円があるかもしれない。

 米国シカゴに上場されているS&P500のオプションをもとに計算されるボラティリティ・インデックス(VIX指数)が上がってきているが、これが上がると結果として日本の企業業績が下方修正された経緯が確認される。VIX指数は恐怖指数ともいわれ、市場に何らかの変調が予想された場合高くなる。VIX指数が40%を超えた後に日本の企業業績がどの程度下方修正されたかというと、過去6回の平均値で、18.7%ポイントの下方修正が2四半期後に起きている。この18.7%ポイントの下方修正を今回のケースに当てはめ、1株当たり利益を修正し、2010〜11年度の平均PERである15.4倍を掛けると8300円水準。ぶれたとしてもプラスマイナス1シグマの水準で、上値は9000円、下値は7700円近辺になる。名目GDPでみても企業業績でみても、7700円水準が下値メドになると判断する。仮に金融危機に発展するとマイナス2シグマでリーマン・ショック後の安値が意識されようが、これはあくまでレアケースと考えている。

 株価の割安度を示す指標としてPBR1倍割れが言われるが、現在のようにPBRが1倍を割れていても、単純に買い戻されないかもしれない。たとえば、TOPIX(東証株価指数)のPBRと、企業倒産件数は逆の動きをしている。PBRが1倍を割れると、通常は半年くらいで1倍を回復するのだが、これは倒産件数がそれほど増えていない場合という前提条件がある。倒産件数が増えてくるとなると、なかなか株価が戻らない。95年1月の阪神大震災時は、暫く倒産件数が増えなかった。しかし、震災の約半年後に不渡りの記載猶予期間が終わり、倒産件数が増加傾向になったという経験がある。今回は10月以降に切れてしまうので、これから倒産件数が増えてくる可能性がある。

 欧州のソブリン問題もアメリカの財政問題も根が深いが、これらが一息ついたとしても、日本で倒産件数が増えてくると、9000円を大きく超えて上がるのは難しくなる。従って、株式を買うのなら株価が実体経済や企業業績の悪化を十分に織り込んだ水準まで調整するか、景気の先行指標に明るさが見えてくる時期まで待つ必要がある。

 循環的には年末までに反転の可能性があると考えている。株価よりも早く動く傾向がある指数がある。たとえば、OECDの景気先行指数を前月比年率に加工すると、1970年以降の底入れは日本株よりも平均して2.5ヶ月早くボトムを付けていた。この景気先行指数は月の上旬に発表されるが、2カ月遅れになるので2011年8月分は10月10日に発表される。これが7月分の数値を上回れば、外国人のリスク回避姿勢が峠を越える可能性がある。金融不安が限定的であるならば、遅くて11月の発表時にはボトムアウトを示すと考えられ、これが循環面からの買いのツボになると思っている。

 さらに、韓国の電気機械工業の出荷−在庫バランス(出荷の前年比から在庫の前年比を引いたもの)も日本株よりも早く動く傾向がある。これは概ねマイナス40からプラス40で動くのだが、10月くらいにはボトムをつけそうな動きだ。株価の反発までのタイムラグが3ヶ月くらいなので、年末から年明けあたりに株価のボトムアウトを示唆する形になると考える。

 バブル崩壊以降、名目GDPは低下傾向にあり、日本株も毎年3.6%ずつ下がっている。バイ・アンド・ホールドで日本株を持ち続けていたら、毎年3.6%値下がりしているので現金で持っておいたほうがよかったということになる。ところが、株価のリズムをとらえて安く買って、ある程度戻ったところで売れば、年間で10%くらいのパフォーマンスは求めることができると考える。そのタイミングをはかるツールとしてこれらの指標を使っていきたい。

――当面の投資戦略は?

 今はまだ、欧州問題など構造的なプレッシャーがかかるので、基本的に現金の比率を高めるときだと考える。資金量が豊富にあり1000〜1500円の調整局面で買い下がれる投資家は別として、構造問題や経済の動きを無視して、単に短期のリバウンドを狙いに行く事は避けておきたい。それは、迫り来るローラー車の前に落ちている小銭を拾いに行くようなもの。しかし、これから先行指数が循環的に反発してもおかしくない場面を迎えるので、ソブリン問題が一息つくような時期には、海外で売り上げを伸ばせる会社の株式を仕込んでおくのが良策と考える。有名なグローバル企業でも売り上げが伸びない会社には投資すべきでない。内需型でも国際戦略を取って、円高を利用して次のステップのために投資を行っているような会社には妙味がある。銘柄を選別してタイミングを見計らって買っていくと良い。

 タイミングが大事なので、株式相場がどの程度の景気悪化を織り込んでいるかということも点検しながらやっていく。これを判断するためのひとつの指標として、分子に米国株式のダウ輸送株指数、分母にダウ公共株指数をとったレシオを見ると参考になる。このレシオは景気敏感株をディフェンシブ株で割っているので、市場参加者の景況感を表しているといえるのだが、長い視点で捉えると、これが比較的正しく世界の景気の動きを映している。ところが、たまに経済指標とこのレシオが大きくかい離することがある。2011年のピークは4月4日に12.96倍になった。過去30年間の月末値と比較すると2番目に高い水準だ。これが7月7日以降はほぼ一本調子に下がり、10月3日には9.53倍まで低下した。過去の推移から、おおむね8倍まで下がると、景気悪化を織り込んだといえる傾向がある。このレシオが物語っていることは、(1)4月の時点で市場は景気拡大が続くという楽観ムードに包まれていた、(2)7月以降急速に景況感が悪化した、(3)それでもまだ景気が悪化することを十分に織り込まれていない、である。世界の株価には、もう一段の低下がありえる。

 構造問題は深く、欧米は日本化の問題を抱えている。解決するまで時間がかかるだろう。しかし、循環的なウエイブはある。市場参加者も政策当局も「今は最悪」と悲観的になった時に買えばよいと思う。(編集担当:徳永浩)

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